日本人が古来たしなんできた「丹精」という心構えと、手仕事の出来ばえや深い味わいには切っても切れない縁があります。なぜなら限られた資源を活かし、自分がいつか死んでも、残っていく物には魂をこめて、大切な人に手渡そうと心掛けてきたからです。だから丹精な手仕事は地域と人の暮らしを文化で結ぶ要でした。
丹精な物づくりには、つながる喜びと勇気が生まれます。それは今も亜流に飲まれない逞しさと、脱常識な新しい発想をもたらしてくれます。本書では丹精をキーワードに、地方を支える仕事師5人の発想力を詳しく紹介します。雑魚を活かす丁寧でユニークな干物づくりの佐藤勝彦さん、田と山を守りすべてを自力で届ける加藤周一さん、木の節をデザインに活かして家具業界の常識を突き崩した岡田贊三さん、あらゆる自然素材と土で壁を自在に塗る泥のソムリエ・挾土秀平さん、そして老舗造船所で培われた鉄の加工法を切り札に建築界に新風を送る高橋和志さん。目先の効率主義にばかり心を奪われてきた物づくりは今、曲り角を迎えています。 (*写真もすべて筆者撮りおろし)