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いっけん脈絡のない物語に近づく動線が近年、「記録する人」という立場をはっきり自覚してから一つに繋がりだしたのを感じます。早い話が、本や写真や映像を駆使して「領域横断性」をメディアの中に求めていたのかも知れません。各地を取材で歩くとバラバラに解体されかけたコミュニティーの痛みや、人づき合いの薄さに気づきます。初めは原因も良く分からなかったけれど、この社会が「つながるよろこび」を見失いかけているのでないでしょうか。断ち切られた日本の過去と現在の歴史的な連続性、またそこに生まれる年寄りと若者の世代間ギャップ、男女の断絶、誰もが持っていたはずの自然体な日本人のアイデンティティーや誇りの喪失など。人々が孤立化しつつあるのを肌身に感じます。文学やアートや歴史や娯楽も、元はといえば人々がつながる喜びを求めて生まれた手だて。そのつなぎ目を再発見しようと、個であることの大切さ、全体で丸く収まる共存の意味を手探りしてきました。このサイトでそんな一連の記録仕事を紹介しながら、新しい出会いと自他の寄る辺を求められたら嬉しい。
Antje Gummelsさんは南ドイツのレーゲンスブルグに生まれ、15才でイタリア・サンレモの芸術村に移住し、87年に来日した女性アーティスト。その彼女が13才の時の神秘体験以来、アートを通してずっと追い求めてきたのは「内なる光」です。群馬県中之沢美術館で08年4月〜6月に開催された、本格的な個展に向けて制作されたプロモーション映像がこの「Travelling Inside」。新潟市の酒造元のアトリエで99年から営まれている、アンティエさんの既成概念に捕らわれない、旺盛な芸術活動と日々の美学が記録されています。(25分作品)
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新潟市竹野町の旧北国街道に面した上原酒造は、明治23年創業のローカルな日本酒
メーカー。昔ながらの木綿絞りを復活させたり、日本で地ビール第一号を生み出した
りと、イタリア在住13年の風変わりな社長は進取の気性に富む。毎年一月、酒造場
で寒仕込みが静かにはじまる。機械化を排した手づくりの現場で、杜氏や従業員はど
のような身体の動きを重ねて酒をつくりだすのか。身体とものづくりの関係に着目し
ながら、海外での日本酒紹介用に制作されたメイキング映像です。(30分作品)
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森林に恵まれた島国日本では、ひと昔前まで各地に優れた造船術が根づいていました。漁業が遠洋化するにつれ、それは高度な鉄鋼船に姿を変えていきます。けれど石油危機と200海里規制後に業界は元気を無くします。老舗造船所の跡取りだった気仙沼の高橋和志さんは、そんな鉄の技を陸の建築で次々と披露し、花の銀座を飾るほど建築家にひっぱりだこなエンジニアです。彼の孤軍奮闘ぶりと、漁船建造の技がなぜ優れていたかを紹介します。
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役立たずと思われた雑魚と小魚に丹精こめた手仕事で、旨い食材としての価値を与えた福島県いわき市の佐藤勝彦さん。漁師の家系に生まれた彼のまなざしに縄文人の共生的世界観を重ねながら、弱肉強食の舞台より一つ上をいく物づくりの独創性を紹介します。東京海洋大学の授業用にまとめた小品ですが、にっぽんの手仕事の原点がすべてを「活かす」古来の自然観から生まれたと気づくでしょう。
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金沢21世紀美術館で04年夏に催された荒木経惟『日本人ノ顔プロジェクト』石川篇。延べ四日間に七百数十名を撮る荒行のごとき写真行為のプロセスを二十数分で見せる傑作。「写真に残さなければ記憶なんてすぐ消えてしまう」と名言をはくアラーキー氏は、私が二十代の頃からの写真の師匠で、このプロセス映像も再会の記念碑です。コミュニケーションの天才・荒木は、カメラマンが世間と無名の人々に虚心坦懐に向き合う中から、大きな成長をつかむ事実を身をもって伝えます。
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NHKに出演以来、カリスマ左官として独自な道を歩む挾土秀平さん。その丹精が一気に花開くは、素人50名強と協働した2001年夏「八ヶ岳・泥の野菜蔵づくりワークショップ」でした。あらゆる自然素材と土から手仕事を発想する職人の工夫と誇りに、血中縄文濃度の高さを誰もが感じずにいられません。その一週間に及ぶ発汗を描いたドキュメンタリー。利己的な芸術家であるよりも、利他的な職人であろうとする彼の生き方が心に響く。
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