『野菜の時代 東京オーガニック伝』NHK出版
畑や農家の脇を通る時、どんな作物が採れるのだろうか?と考えたことはありませんか。食の安全性がこれほど問われながら、実は大半の人が生産現場の実態を
あまり知りません。本書は東京世田谷で江戸時代から営まれる大平農園の、有機農法を通して発見した現代の食事情探訪記です。そこから広がる養蜂家やオーガ
ニックレストランの経営者や養鶏家、映画人などの人生模様も面白く描きました。農作物の生育特性や魚介類の生態やエサ、また家畜の飼育システムを自分の目
で一度確かめてみると、口に入れるべき正しい食材の選び方や、味とは何か?がおのずと分かってきます。この農場と関わるまで私も食材や農業や料理法も詳し
くありませんでした。けれど有機栽培の難しさと丹精こめて働く人びとのユニークな工夫ぶりを知ると、その対極にいるデタラメな手抜き農家がいかに多いかも
気づきます。そうした農業現場での援農や見学を数年重ねながら、見聞きした人びとの生き方をルポしました。農産物は工業製品ではありません。だから季節に
関係なく量産すれば、必ず嘘をつかざるを得なくなってしまいます。赤福のような農産加工食品も同様です。それでも日本の食文化や農業が世界的に見て、とて
も優れているのはまちがいありません。